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鉛フリーはんだ

久々に電気のお話です。

先日急に半田付けがうまくいかなくなりました。
仕事をしながら首をかしげる事になってしまい、もしや私自身の老化が原因ではないかとまで考えたのですが・・・
ところが、若い後輩君も同じ状況になったのです。
原因は、つい先日上司が仕入れてきた「はんだ」でした。
「鉛フリーはんだ」だったんですよ。

「鉛フリーはんだ」と言っても、一般の方はあまりご存じないと思います。
電気回路の接合に使う半田付けの材料が「はんだ」です。
普通の「はんだ」は「錫と鉛を主成分とした合金」で、鉛が人体に有害なのは皆さんご存知の通りです。




。。。。。。。。。。。。。。。。

ここから例によって、私見ですからよろしく

EUのRoHSという指令の下、鉛を含有した従来の「はんだ」を使用した製品は現在では欧州へ輸出できません。
その対応策として「鉛フリーはんだ」が出回るようになったのですが、これがとんでもない物です。
少々ウィキペディアRoHSの項から引用させていただきます。
------------これより引用-------------
鉛フリーはんだはビスマスやインジウムなどの合金が用いられているものがあるが、これらの有害性の評価は十分でなく、鉛より有害との報告もある。
さらに、インジウムなどは鉛よりはるかに希少な資源であり、代替物質として多量に使用することによる枯渇が危惧されている。
また、ビスマスは鉛を精錬する際の副産物である為、ビスマスを生産する際には常に鉛も生産されることになり、この点からも代替品と呼べるか疑問視されている。

なお、鉛フリーはんだは現時点では性能が従来の含鉛はんだより劣り、製品の歩留りや耐久性が悪化する。
このため、鉛フリーはんだの使用がかえって廃棄物増加を助長しかねないという見解もある。

また、鉛蓄電池や釣り用の鉛製ウェイトは規制対象となっていないが、これらの逸散による環境影響を考慮すると、電気製品への使用制限が果たして定量的に有効なのか、という疑念もある。

さらに、RoHS指令自体が、環境政策に名を借りた非関税障壁とする考えもある。
------------ここまで引用-------------

ソースはこちら
引用文中にある「鉛蓄電池」というのは、自動車やバイクのバッテリーです。
これは大量の鉛を含有しているのに規制しないんです。
このあたりを考えれば、裏に何があるのか想像がつきますよね。
私自身は、非関税障壁以外の何ものでもなく、いかにも正論らしき事を振りかざして自分達の利益を守っているのだと思っています。

その「鉛フリーはんだ」自体についての問題点も、ウィキペディア鉛フリーはんだの項から引用させていただきます。
------------これより引用-------------
鉛フリーはんだは下記のような問題点があることから鉛含有はんだ(通称:共晶はんだ)を完全に置き換えるまでには至っていない。

* 合金の溶融温度がこれまでより数十度上昇するため、素子の熱破壊や劣化の危険性が高くなる。
* 融点が高い種類の鉛フリーはんだでは、従来のSn-Pb系の鉛含有はんだで多く用いられている、温度固定されたはんだごてでは温度が低かったり、温度回復力が弱い等問題があるため、対応したこてを使う必要がある。
* 手作業によるはんだ付けにおいて、適切にはんだ付けされていても表面に艶のあるはんだ面と成らない(引け巣)ため不良との区別が付きにくく、実際の不良を見逃しやすくなるおそれがある。
* 機械によるはんだ付けの場合は、従来の鉛を含むはんだと組成が異なるために自動はんだ槽を化学的に浸食して穴を開けるなどの問題(エロージョン)が発生し、それを防ぐためにはんだ槽材質の変更が必要となる。SUS304ではなくチタン材、SUS316、SUS316L、鋳物などを採用しているメーカーが多い。
* 含鉛はんだめっきと比較して錫めっきではウィスカー(針状の金属結晶)が発生し易くなり、ウィスカーによる端子間のショートによるトラブルが問題となる(特に嵌合時に応力が掛かるコネクタ類の端子に発生し易い)。
* エロージョンと同じ現象により、プリント配線板上においても銅パターンやスルーホールが鉛フリーはんだにより溶解される銅食われが発生することがある。銅食われが悪化すると最悪の場合断線してしまうため信頼性が低下する。
* Sn-Pb系の鉛含有はんだに比べて経年劣化や接続信頼性など、対環境性が低下することがある。
* Sn-Zn系鉛フリー半田で積層セラミック・コンデンサを実装すると、積層セラミック・コンデンサの絶縁抵抗が劣化する場合があるということが確認されている。
------------ここまで引用-------------

ソースはこちら
引用文の意味が専門的で理解できなくても、これが「使えないシロモノ」であるという雰囲気は掴んでいただけるんじゃないでしょうか?
特にウチのように、小ロット品だったり、手作業で修理するような場面では使えません。

ウチの上司がその宣伝文句を素直に受け取ったのか、何も気が付かなかったのかはわかりません。
とりあえず私の判断で、従来から使っていた物に差し替えしました。
その事がどう判断されるのかわかりませんが、上司のメンツより実務が大事です。

近い将来コスト面さえクリアできれば、
「導電性接着剤」に主役の座を譲って、「はんだ」は過去の遺物になるんだろうなぁ

  by tak_a86 | 2011-01-15 22:14 | 電気の話 | Comments(4)

Commented by すわべ at 2011-01-16 00:30 x
私が中学生の頃から愛用していたハンダゴテがダメになってしまったのは、鉛フリーハンダのせいだと思っています。
コテ先が酷い「ハンダ喰われ」になって、使い物にならなくなってしまったのです。

それと、高校生の頃に作った自作パラボックス(FETバッファを通して分岐したアクティヴパラボックス)を修理した時に、蛇の目基板)のランドがハンダし直した部分がことごとく剥がれると言う憂き目に・・・
あ、この蛇の目基板はICピッチでは無い物でした。
学校の実習室の備品をくすねた物でした(もう時効だよね(笑))

あと、ポンプ式のハンダ吸い取り器で吸い取りにくくなった気がします。
昔は一発で「スポッ」と吸えた気がするんだけどなぁ・・・
単に吸い取り器が古くなってるだけかも(笑)

趣味レベルの私でこうなのですから、生業としている方からしたら実に悩ましい所なのだろうなぁ、と思う次第です。
Commented by tak_a86 at 2011-01-16 01:17
>すわべさん
おっしゃる通り、いろいろと問題がありまして「使えない」という判断をしました。
ポンプ式のハンダ吸い取り器は、私の方でも吸い取りにくい状況が発生しましたので、単に古いせいではないと思います。
特に修理品の品質に不安が残る点が、はっきり言って論外です。
Commented by 上海 at 2011-01-16 01:43 x
これと最近の企業の「コンプライアンス」志向が相乗効果となって現場はたいへんです。
共晶ハンダに含まれる鉛が気化して作業者が吸うなんて迷信を唱える輩まで便乗してきて(笑)
まあ沸点以下でも気化せんとは言いませんがPbフリー化のドライブをかけてるのはそれじゃないだろ、みたいな(笑)

若手にPbフリーでハンダ付け教えるのに疑問を感じる今日この頃。。。
Commented by tak_a86 at 2011-01-16 02:13
>上海さん
ウチでこの状況なのですから、そちらでは私みたいな勝手が出来ない状況でしょうね。
時代が変わったのかもしれませんが、まったく納得できません。
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